自分は頭が悪いので、この歳になって、やっと分かったことがある。 
 歳をとると、病院に入院するのは直るためではなく、無事に死ぬためだということ。
 極力自宅で療養し、最後の最後に病院へ搬送され数日後に往生するのがおそらくもっとも幸せな死に方だろう。
 コロナ禍の中、いまわの際に近親者が沢山集まることができないのが残念だが。
 ただ自宅療養中に家族に負担を掛けないようにするのがとても難しい。
 介護認定を受ければ要介護度に応じた金額のサポートを受けられるが、所詮は家族の負担を短時間だけ減らすためのもの。 家族にとってありがたいことだが、根本的に楽になるわけではない。
 できれば要介護3以上になって、施設それも有料老人ホームへ入るのが一番のようだ。 ただ、以前はあんなにあった有料老人ホームのCMが今は目にする機会が全く無い。
 コロナ禍で人知れずクラスターが発生したり、経営がかなり厳しくなっていたり、おそらくただでさえ少ない人手が、さらに足りなくなっている気が。
 老人ホームは提携している病院が決まっていて、もしもの時にはその病院に搬送されそこで最後の時を迎えるのが普通。 ただ今の状況、施設や提携先の病院でクラスターが発生して行き場がなくなったらどうなるのか、たしかそんな事例もあった気がして不安になる。
 もともとこのような病院は、老人の治療には重きを置いておらず、最後の時いかにして無事に死を迎えさせるか、それに手馴れた施設におのずとなってしまいがち、年寄りの入院患者にはつらい施設かもしれない。
 こうやって考えると、無事に歳を取り死んでいくことが如何に難しいか暗澹たる気持ちになる。 特にコロナ禍で医療体制が危機にある現在、どうすれば自分の身を守れるのか不安になるばかり。
 話がずれてしまったが、自分はコロナの軽症、中等症の自宅やホテル隔離には賛成である。 増えつつある40代、50代の重症患者の病床確保のため、早急に対応するべきだと考える。
 勿論他に良い方策があれば良いのだが、厚労大臣が言うように医療資源は無限ではない、人的、物的、いろいろな意味で有限なのだから。
 コロナにより大変な財政負担を強いられている現在、この負担はどこへ行くのか? 少なくともあと15年程であの世に行く自分ではない。
 コロナ脳天気に渋谷でインタビューされたり、したりしている若者達の借金になるのだから。 借金の担い手65歳未満を大切に。
 冗談はさておき、1年前に入院した家族の場合、ICUに入ったりECMOに繋がったりする必要はなく、高熱が続いたが、まだ対処療法も定まっていなかったようで、くすりの投与も行われなかった。 ただ頻繁にレントゲンだけは撮ってくれて、肺に影が見えるかどうか常にチェックされていた。 今なら自宅かホテル療養レベルだった気が。 まだ珍しい例だったのか医療スタッフの手厚い看護を受け、早期に退院できたのはある意味幸運だったのかもしれない。 家族としても面会もできず、病院を信頼して全て任せるしかなく、心配はしたがこちらで出来ることはなにも無かった。 良くなることを信じて待つだけ。
 ただ、検査後、まさかの陽性で直ぐに入院になり、何の準備もしていなかったので、日用品やパジャマなどはこちらで至急手配する必要があった。
 最近の病院では、パジャマやタオルなどは規定のものをリースするのが普通だと思っていたら、法定感染症の場合、全て汚染物質になるので自前で準備する必要があり、持ち込んだ物も全てが汚染物質として退院時にビニール袋に入れられて返されたり、お見舞いの花も病室には持ち込めず、守衛室で預かって貰うはめに。
 1年前のあの状況で今、自宅かホテル隔離を選べと言われたら果たしてどうしたか想像してみる。 多分ホテル隔離を選択したことだろう、自宅隔離も不可能ではないが、家族への感染はどうしても避ける必要があるからだ。
 勿論ホテル隔離でも同じく回復したとは思うが、本人の不安、家族の不安はかなり増大したことだろう。
 ただ、1年前は持参したパルスオキシメータでSpO2を測定してメールしてくれたり、調子がよければ持参したモバイルWIFIルータとPCでskypeをしたりして全く連絡ができないことは無かったので、同じ事をホテル隔離でも出来れば少しは不安が和らぐことだろう。 なにかあっても直ぐに連絡がつくのは心強いものだから。
 これだけ安価にネットワークカメラやスマートフォンによるネットワーク通信ができる時代に、なぜ自宅やホテル隔離者のリモート監視をやろうとしないのか不思議である。 もっとも数週間で隔離が終わるのが殆どの状況なら、余計な手間をかけてもしかたがないと言えばそれまでだが。 ただ、間違いなく自分ならば、ネットワークカメラやモバイルWIFIルータを病室に持ち込んで外部と繋がろうとジタバタすることだろう。
 繰り返すが、自分はコロナの軽症、中等症の自宅やホテル隔離には賛成である。 重症者用病床の確保は必須と思うからだ。
 はっきりしているのは自分がこれからもコロナに感染する恐れの少ない半ば隠遁生活をおくり、人混みは避け続けるだろうこと。
 これだけやっても、自分が感染し、軽症、中等症になったら、ホテル隔離もやむ無しの覚悟でいること。
 もし万一重症化したら、その時は重症者病床が逼迫していないことを祈るだけ。
 1年前のあの保健所とのやりとり、PCR検査の不安、回りの方達にかけた迷惑、退院後の自宅療養、思い出しても二度と経験したくないことばかり。 ただ本人はもっと大変だっただろう。
 国や地方自治体、保健所や病院の対応を批判することは簡単だ。 だが、この状況下で100%の対応を期待してはいけない。 皆さん最善を尽くしてくれていることは間違いないのだから。
 大事なのは如何にこれらの機関の世話にならないようにするかということ、つまり如何にして自分が感染者にならないようにするか、片足すらも棺桶に入れないようにするかということ。
 外にも出ず、人と接触せず、人混みにも入らず、消毒を続けられるかということ。